睡眠負債とは?睡眠不足を解消して質を改善させるTipsを紹介





ここ数年の生活様式や働き方の変化により、健康面や睡眠の質が注目されつつあります。「寝つきが悪い、眠りが浅い」「朝起きても疲れが取れない」と感じつつも、そのまま放置してしまっている方は多いのではないでしょうか。
そこで今回は、放置しておくと危険といわれている「睡眠負債」の影響と、簡単にできる睡眠の質を上げるTipsをご紹介します。



睡眠負債とは?



「睡眠負債」とは睡眠不足が日々蓄積した状態です。睡眠時間の不足に加え、眠りが浅かったり、寝つきが悪かったりする状態が続いていても睡眠は不十分なので、睡眠負債として蓄積してしまいます。
睡眠負債が蓄積してしまうと、日中の眠気や疲れ、イライラ感、ストレスの増加、仕事効率の低下、さらにはうつ病や生活習慣病などのリスク因子となってしまうこともわかっています。睡眠の不調は、カラダとココロの健康に悪影響です。
特に今のシーズンは季節の変わり目で自律神経が乱れやすく、さらに春の花粉症シーズンでもあるので鼻づまりやくしゃみ、かゆみ等で睡眠の質が低下しやすい時期でもあります。
睡眠負債が蓄積した状態が続いていると、睡眠薬や治療が必要な状態まで悪化してしまう可能性が高くなってしまいます。睡眠の不調を感じ始めたら、早めに対策をとりましょう。



理想の睡眠時間はどれくらい?

 

目安は7時間といわれていますが、理想の睡眠時間は個人差が大きいので一概には言えません。「7時間」は統計的な研究によって示されている目安です。
私たちの睡眠はレム睡眠、ノンレム睡眠という2つの種類の睡眠状態を、一晩の睡眠中に数周期繰り返しています。体を休ませる睡眠、脳を休ませる睡眠ともいわれており、どちらも必要な睡眠状態です。この2つの睡眠状態が交互に現れる睡眠リズムの状態が、質の良い睡眠といわれています。睡眠時間を7時間確保していても、睡眠の質が悪ければ睡眠不足状態となり睡眠負債が蓄積してしまいます。

またショートスリーパーに憧れて睡眠時間を短くしようとする方もいるかもしれませんが、ショートスリーパーやロングスリーパーは生まれた時から遺伝子で決まっているといわれています。ナポレオンやエジソン、レオナルド・ダ・ヴィンチはショートスリーパーとして有名ですが、これらの偉人達は生まれつきのショートスリーパーであったことが考えられます。
現代人の中には大人になって睡眠時間を短くしている「自称ショートスリーパー」が多くいるといわれています。子どもの頃からのショートスリーパーでもないのに短い睡眠時間で日々過ごしていると、ダルさや集中力低下状態が続いてしまい、さらに徐々に慣れが生じてそれが通常状態だと誤って自覚してしまいます。短い睡眠で過ごしている方の中には、自分では気づかないうちに疲労感や仕事のパフォーマンスの低下が起こっている方が多くいるかもしれません。



睡眠の質を高めるTips

まずは自分に必要な睡眠時間の確保が必要ですが、合わせて睡眠の質を上げることも大切です。

・快眠のための日光浴

良い眠りを得るためには寝る前の対策が大切だと考える方は多いかもしれませんが、それだけでは不十分です。起床後には、太陽の光を浴びる必要があります。しっかり日光を浴びることで、眠気が抑えられてすっきりと目覚めることができます。さらに朝に日光を浴びておくことで、夜に質の良い睡眠に必要とされる睡眠ホルモンがしっかりと分泌されやすくなります。室内照明の光では不十分なので、外に出るか窓際で日光を浴びるようにしましょう。

・朝食で栄養補給

また睡眠ホルモンの分泌には朝食も大切です。睡眠ホルモンの原料となるのはトリプトファンというアミノ酸です。夜に睡眠ホルモンを分泌させるには、朝食で原料を摂取しておく必要があります。アミノ酸はタンパク質を構成する成分なので、朝食ではタンパク質を含む食べ物を摂りましょう。朝に時間のない方は、気軽に摂れるプロテインもおすすめです。 


・夕食はタイミングも大切

夕食は、時間帯に気を付ける必要があります。夕食をとってすぐに寝ようとしても、体はまだ食べ物の消化途中で働いている状態です。この状態のままでは体はリラックスできておらず、質の良い睡眠は得られません。夕食の目安は就寝時刻の3時間前までです。しっかり消化させてから就寝するようにしましょう。
夕食時に気を付けたいのが、カフェイン摂取です。カフェインが睡眠に悪影響となるのはご存じの方が多いかもしれませんが、カフェインの影響は長い方だと8時間ほど続くといわれています。夕食時や夕方以降にカフェインが含まれるコーヒー、お茶、エナジードリンク、チョコレート等は控えましょう。ルイボスティーやそば茶はノンカフェインなので夕食時にもおすすめです。 


・熱すぎるお風呂はNG

睡眠には体温も関係しているので、一時的に体温を上げる入浴は睡眠の質を大きく左右します。
私たちの体温は1日を通して緩やかに変化しており、日中は高く、夜は徐々に低くなります。この夜の体温が低くなる時に自然と眠気が生じて質の良い睡眠に繋がります。入浴で一時的に体温を上げ、反動で入浴後しばらくして体温が下がるタイミングに就寝するようにしましょう。
理想的な入浴は、就寝の90分前、少しぬるいと感じる40度前後で10~20分程度です。
就寝前に熱すぎるお風呂に入ってしまうと体温が高い状態がしばらく続いてしまいますし、熱さで体はリラックスどころか逆に覚醒してしまい睡眠に悪影響です。就寝時刻から逆算してベストな時間に入浴しましょう。

・就寝前はスマホも照明にも注意

就寝直前はパソコンやスマホ操作は控えましょう。画面からのブルーライトは睡眠ホルモンの分泌を抑制させてしまいますし、パソコンやスマホを操作することによって脳が覚醒しやすくなるので良い眠りは得られにくくなります。就寝前は、室内照明を暗めにしたり間接照明にしたりして穏やかな空間を作り、アロマやストレッチ、落ち着くBGMなど自分に合った方法でリラックスして過ごしましょう。アロマキャンドルは視覚からも嗅覚からもリラックスしやすいのでおすすめです。就寝前のリラックスタイムを毎日のルーティン化することで、より寝つきが良くなるでしょう。
 



睡眠に関するこんなウワサは本当?

睡眠はまだまだ研究途中の分野です。日々正しい知識へアップデートしていきましょう。

・眠れないときはお酒で解決できるの?

寝酒はおすすめしません。
お酒を飲むことで眠くなりますが、アルコールの代謝過程で起こる眠気は一時的です。アルコールは体の代謝過程でアセトアルデヒドという物質に変換されますが、このアセトアルデヒドは体を「覚醒」させてしまいます。飲酒で一時的に寝付けても、その後は浅い睡眠が続いてしまいがちで睡眠の質は悪くなってしまいます。寝酒として飲むアルコールは控えましょう。

・寝る前に運動した方がいいの?

寝る前の激しい運動はおすすめできません。
激しい運動をすることで交感神経が優位になり、さらに体温も上がり体は覚醒状態になります。覚醒したままだと眠気は起こりにくいですし、睡眠の質も低下してしまいます。寝る直前の激しい運動は控え、リラックスして行えるストレッチやヨガなどがおすすめです。

・寝だめはできるの?

できません。
睡眠は睡眠負債として「借金」は溜まっても、「貯金」することはできません。
休日にいつもの時間より長く寝てしまうと、逆に体へ負担がかかってしまうことがあります。長く眠る日の時間の目安は、いつもの睡眠時間プラス2時間までです。これ以上長く寝てしまうと体内時計が乱れてしまい、寝ても疲れが取れるどころか逆に疲れが溜まってしまいます。

・7時間寝ていれば大丈夫なの?

必要な睡眠時間には個人差があります。「日中の眠気やダルさがない」「起床時に眠気や疲れが残っていない」「休日に寝だめの必要を感じない」というのが適切な睡眠をとれている目安です。
日中過度に眠気が出て集中できなかったり、自然な目覚めが得られなかったり、休日にいつもより長く寝てしまっていたりする方は睡眠不足の可能性があります。睡眠時間の確保かつ、質の良い睡眠を目指しましょう。





最近疲れやすくなった、ダルさが続くという方は、もしかしたら睡眠不足が原因かもしれません。睡眠負債は自分ではなかなか気づきにくいので、知らず知らずのうちに悪化し続けてしまう可能性があります。
しかし誰でもできる簡単な睡眠対策はたくさんあります。まずはできることから始めて睡眠の質を改善し、睡眠負債を解消して健康的な生活を送りましょう。




プロフィール

田口里奈(たぐちりな)

薬剤師/睡眠健康指導士/インテリアコーディネーター/ライター
薬局薬剤師をしつつ、オンラインでのインテリアコーディネート提案、睡眠やインテリア系の記事執筆を行う。
インテリアでは睡眠に不調を抱える働き世代の方へ、医療知識やエビデンスに基づく内容なども盛り込んで睡眠の質、生活の質を上げるインテリアコーディネートを論理的にご提案している。