お茶の魅力とは?茶農家が語る緑茶の美味しい淹れ方や他のお茶との違い




食事のとき、来客時、ちょっと一休みしたいとき。
あなたは、どんなときにお茶を楽しんでいるでしょうか?

日本人にとって欠かせない「ソウルドリンク」と呼べるのがお茶です。こちらでは、日本人にとって身近な存在でありながら、あまり知られていないお茶の魅力をご紹介します。


◆「お茶」とは?




「お茶でも飲みませんか?」と言われたときに、あなたが連想する飲み物は何ですか? 緑茶を想像する方もいれば、紅茶やコーヒーなどをイメージする方もいらっしゃるでしょう。

もともと「チャ」とは、中国を原産とするツバキ科ツバキ属で、正式名称を「カメリア・シネンシス(Camellia sinensis (L.) O.Kuntze)」という植物から作られた飲料を指します。この植物はカテキンやカフェインといった成分を含んでおり、実は緑茶をはじめ、紅茶やほうじ茶、玉露、烏龍茶、プーアル茶などは同じ「カメリア・シネンシス」から作られているのです。


◎同じ植物から作られているのになぜ違う?

同じ植物から作られているはずの緑茶や紅茶、烏龍茶の見た目や味などが異なるのは、製造方法が異なるからです。緑茶は一切発酵させず蒸したり炒ったりして製造しますが、紅茶は葉を傷つけることで酸化酵素を働かせて完全に発酵させます。烏龍茶は「半発酵茶」と呼ばれ、ある程度発酵が進んだ葉で製造しています。

そのため、玉露やほうじ茶、番茶などのように発酵していないお茶は、すべて「緑茶」に分類されるのです。ちなみに、麦茶をはじめドクダミ茶やハト麦茶など、「カメリア・シネンシス」以外から作られた飲料でも日本では「お茶」と呼ばれる傾向にありますが、実際には別物です。



◆緑茶の種類と特徴

日本でもっとも多く生産され、飲まれているお茶は「日本茶」という名称で呼ばれることからわかるとおり緑茶です。緑茶と言っても、煎茶や玉露、番茶をはじめ、くき茶、ほうじ茶、粉茶、玄米茶、かぶせ茶など、非常に豊富な種類があります。

煎茶
日本茶の代表とも呼べるお茶です。高温で蒸すことで発酵を止め、手や機械で揉みながら細くより込み、乾燥させて製造します。短時間で蒸したものを「普通蒸し」、長時間蒸したものを「深蒸し」と呼びます。主に摘採時期によって「上級」「中級」などランクが分かれます。

玉露
高級茶の代名詞として知られるお茶です。茶園に専用の棚を設置し、すだれなどによって日光を遮ることでお茶の葉に含まれる葉緑素を増やします。苦み成分のカテキンは少なくなり、濃厚な旨みと独特の香りが生まれます。

番茶
普段用の飲料として好まれるお茶です。一般的にはお茶の摘採時期ではない管理作業などで刈った葉を使用して製造されており、安価でさっぱりした味が楽しめるのが特徴です。

くき茶
普通のお茶は葉を使って作りますが、製造工程で選別された茎の部分を使って製造したのが「くき茶」です。旨み成分のテアニンの含有量が多く、独特の甘さが特徴です。

ほうじ茶
下級の煎茶や番茶、くき茶などを高温で焙煎して仕上げたお茶です。色が茶色で、こうばしい香りがします。焙煎によって苦みが抑えられるため、飲みやすいのが特徴です。

粉茶
煎茶などの製造工程でふるい分けられた粉から作られるお茶です。ティーバッグの原料や寿司屋などでも使われており、強めの渋みとお湯で浸出した際の鮮やかな濃緑色が特徴です。

玄米茶
下級の煎茶や番茶に、こうばしく炒った白米をブレンドして作られたお茶です。通常のお茶とは異なる甘くこうばしい香りがします。カフェインも少なく、お子様でも安心して飲めるお茶です。

かぶせ茶
玉露と同じように日光を遮って、お茶の葉に含まれる葉緑素を増やしたお茶です。玉露のような専用の棚は使用せず、黒い資材を直接かぶせて、短期間で収穫するのが一般的です。


朝の茶事 すっきり抹茶入り
緑茶の爽やかな風味に加えて抹茶特有のすっきりとした自然の渋みが感じられます。

朝の茶事 味わい玉露入り
爽やかな風味でありながら、高級な和菓子にもピッタリ合う奥深い味わいでより旨みが感じられます。


◆美味しいお茶の選び方・淹れ方




「美味しくお茶を淹れる」と聞くと、ちょっとハードルが高いと感じてしまいませんか?こちらでは、お茶を美味しく淹れるための重要なポイントをご紹介します。もっとお茶を楽しむためにも、ぜひ実践してみてください。


【1】茶葉を選ぶ
どんなお茶を淹れるかによって、適切なお湯の量や温度、使用する茶器も変わってきます。家族で気軽に楽しみたいのか、お客様をもてなしたいのかなど、目的に応じたお茶を選びましょう。


【2】茶器を選ぶ
お茶に応じた茶器を選ぶことで、より美味しく淹れることができます。たとえば深蒸し煎茶なら、茶こし部分は金属製の網になっている急須を選ぶと、目詰まりしにくく便利です。


【3】お湯を用意する
お茶の成分に影響が出ないよう、軟水でお湯を沸かします。水道水の場合、沸騰してから弱火でさらに5分ほどお湯を沸騰させ続けることでカルキ抜きすることができます。


【4】お茶の温度を調節する
お湯の温度によって抽出される成分が変化するため、味が大きく変わります。旨み成分の多い高級茶ほど低温で、香りを楽しむお茶は高温で淹れるのが基本です。温度の目安は基本的なお茶の淹れ方(下記項目へアンカーリンク)をご覧ください。


【5】お茶を淹れる
急須に入れた茶葉の量に合わせた量のお湯を注ぎ、適切な浸出時間で湯呑みに注ぎます。浸出時間の目安は、急須の中に入れたお茶の葉が開く程度です。最後の一滴までしっかり注ぐと、二煎目以降も美味しく楽しめます。

◎基本的なお茶の淹れ方

お茶
上級煎茶
3人分
中級煎茶
3人分
玉露
3人分
番茶
5人分
ほうじ茶
5人分
茶葉の量 6g 10g 10g 15g 15g
お湯の温度 70℃ 90℃ 50℃ 熱湯 熱湯
お湯の量 170ml 430ml 60ml 650ml 650ml
浸出時間 2分 1分 2分30秒 30秒 30秒

※茶のいれ方研究会『茶研報』より



◆お茶は天然の「健康飲料」
 


お茶の魅力は何と言っても爽やかな香りや、心をホッとさせる優しい味です。喉の渇きはもちろん、心の渇きも癒してくれる。そんな飲料だからこそ、日本に伝わって1200年以上経った現在でも多くの人から愛されているのではないでしょうか。

そんなお茶には、健康に良い成分がたくさん含まれています。よく知られているのは、お茶特有の苦み成分である「カテキン」、コーヒーなどにも含まれる「カフェイン」、そして旨み成分である「テアニン」などです。

◎お茶に含まれる成分に期待できる効果とは?

カテキン
・抗酸化 ・抗ウイルス ・抗ガン ・コレステロールの低減
・血糖の上昇抑制 ・殺菌 ・抗菌
・虫歯予防 ・口臭予防 ・肥満予防

カフェイン
・疲労回復 ・覚醒 ・むくみ予防 ・頭痛の軽減
・運動能力の向上 ・肥満予防

テアニン
・リラックス効果 ・冷え性改善
・睡眠を促す効果 ・集中力を高める効果
・更年期障害低減効果 ・高血圧予防

日本に初めてお茶が入ってきたのは、西暦800年頃。最澄や空海が活躍していた時代から書物にお茶が登場していますが、それから1200年以上経ってもお茶が愛され続けているのは、優しい味や香りだけでなくこうした健康への効果が実感できたからかもしれません。



◆お茶を飲むおすすめのタイミングとは? 
 


「お茶」と一口に言っても、「日本茶・緑茶」とも呼ばれる煎茶をはじめ、ほうじ茶や烏龍茶、玄米茶、紅茶、麦茶など種類はさまざまです。麦茶は麦から作られますが、大部分のお茶は同じお茶の葉を原料としており、加工によって異なる特徴を持った飲料になっています。

お茶を飲むタイミングは、個人や家庭、さらに地方によっても異なります。一般的には食中・食後、朝、昼、夜という4段階に分かれるのではないでしょうか。

食中・食後  煎茶、ほうじ茶、烏龍茶、玄米茶、麦茶

食中・食後にはお口の中をさっぱりさせるお茶が最適です。
お茶に含まれるカテキンには虫歯や口臭を予防する効果もありますので、小さなお子様にもおすすめです。ただし、お茶に含まれるカフェインは小さなお子様にとって刺激が強い場合がありますので、少し薄めてあげてもいいかもしれません。

  煎茶、ほうじ茶

朝におすすめするのは、眠気を覚ましてくれる「目覚めの一杯」になるお茶です。
特に煎茶には覚醒作用のあるカフェインが含まれていますので、まだ眠いときに一杯のお茶を飲むだけでも目がしっかり覚めるのを実感できるのではないでしょうか。睡眠中は多くの水分を失うため、水分補給にもなります。

  煎茶、烏龍茶、玄米茶、紅茶

お菓子などを食べながらくつろぐ昼には、香りを楽しめるお茶がおすすめです。
アフタヌーンティーでは紅茶を楽しむのが一般的ですが、お菓子によっては煎茶や烏龍茶もばっちり合います。美味しいお菓子のお供に、お茶を選んでみても楽しいのではないでしょうか。

  煎茶、ほうじ茶、玄米茶、麦茶

就寝前の夜におすすめするのは、水分補給やリラックス効果に優れたお茶です。
煎茶には覚醒作用のあるカフェインも含まれていますが、同時にリラックス作用や快眠に効果があると言われるテアニンも多く含まれています。大量に飲むことはおすすめできませんが、適量であればぐっすり眠る助けになるはずです。

上記はあくまで一例で、どんなタイミングで飲んでも楽しめるのがお茶の魅力です。仕事中や読書中など、一人ひとりに適した「自分なりのティータイム」を探してみてはいかがでしょうか。



◆お茶に含まれるカフェインについて




カフェインは、健康な生活をサポートしてくれる優れた効果効能を持っていますが、過剰に摂取すると小さなお子様や妊娠中の方などには害になる可能性もあります。健康的な成人であれば多めに飲んでも問題ありませんが、「どれだけ飲んでも大丈夫」と言うわけでもありません。お茶に含まれるカフェインの特徴や摂取量の目安を知っておきましょう。

◎飲料ごとのカフェイン含有量(100gあたり)

「カフェイン」と言うとまず思い浮かべるのはコーヒーですが、実はお茶にも少なからずカフェインが入っています。コーヒーとさまざまなお茶のカフェイン含有量を比較してみましょう。なお、製品や抽出条件によってカフェイン含有量は変わるため、下記はあくまでも一例です。

コーヒー 60mg
煎茶   20mg
抹茶   48mg
玉露   160mg
ほうじ茶 20mg
烏龍茶  20mg
玄米茶  10mg
紅茶   30mg
※「飲料のカフェイン含有量に関する調査(独立行政法人国民生活センター)」 より

コーヒーは全体的に含有量が多めですが、お茶は種類によって大きく異なります。実はお茶は摘採時期によってカフェイン含有量が変化しており、春に摘まれる「一番茶」の初期のものほど含有量は多くなり、時期が遅くなるほど減っていきます。

玉露をはじめとした「高級茶」はカフェインが多く、カフェイン含有量がもともと低い時期のお茶の葉で作られる玄米茶などは少なくなる傾向にあることを覚えておきましょう。

◎お茶の摂取量の目安は?
 


「欧州食品安全機関(EFSA)」によると、健康に悪影響のない一日あたりのカフェイン摂取量は、健康な成人で約400mg、4~6歳の小さな子どもだと約45mgとされています。その情報をもとに、お茶の摂取量の目安を計算してみましょう。

飲料 湯呑み(150ml)の場合

コーヒー
健康な成人  4.5杯
10~12歳   1杯
4~6歳    0.5杯

煎茶
健康な成人  14杯
10~12歳   4杯
4~6歳    1.5杯

玄米茶
健康な成人  28杯
10~12歳   8杯
4~6歳    3杯

上記はカフェイン量だけで単純計算した表であり、お茶に含まれるテアニンにはカフェインの作用を和らげる効果もあるため、上記より多めに飲んでも心配ありません。妊婦さんの場合は約200mgまでのカフェインであれば影響はないと言われていますが、なるべく控えるようにしましょう。

◎食事中にお茶を飲むメリット

地域性や生活習慣によっても異なりますが、食事中に緑茶を飲む方もいらっしゃるかと思います。実は、水ではなくあえてお茶を飲むことにはメリットがあるのです。

お茶に含まれるカフェインには脂肪の蓄積や糖分の吸収を抑える働きがあると言われており、食事のカロリーが気になる方には最適です。また、虫歯予防・口臭予防の効果を持つカテキンの効果も併せると、魅力を感じる方は多いのではないでしょうか?

◎お茶を夜飲むと眠れなくなる?

就寝前にお茶を飲むと、カフェインの覚醒作用で眠れないのではないかと気になる方も多いのではないでしょうか。確かにコーヒーの場合は覚醒作用によって眠気がなくなってしまいますが、実はお茶は違います。

お茶には旨み成分である「テアニン」というアミノ酸が多く含まれており、テアニンにはリラックス効果や快眠効果があるほか、カフェインの覚醒作用を和らげる働きがあることもわかっています。

たとえば玉露はコーヒー以上のカフェイン含有量が特徴ですが、テアニンの含有量も多いためコーヒーのような覚醒作用はほとんどありません。適度に緑茶を飲むことで、睡眠の質の改善にも役立つかもしれません。



◆忙しい人でも美味しい緑茶を飲む方法
 


「お茶を飲む」と言うと、茶葉を買ってきて急須で淹れるというイメージが強いのではないでしょうか。しかし、仕事が忙しい方や子育てに追われている方の中には、急須どころかティーバッグでお茶を淹れる時間を確保するのも難しい方もいらっしゃいます。そんな方におすすめしたいのが、ペットボトルの緑茶です。

◎近年のペットボトルはレベルが高い!

ペットボトルの緑茶が出始めたばかりの頃は、お茶業界からの評価は厳しいものでした。しかし現在では抽出技術も高まり、香りや味のレベルも大きく向上して、お茶業界からの評価も変わってきています。

ペットボトルのお茶は、手軽に飲めて劣化しづらいことが大きな魅力。現代は、急須が家になくても、ティーバッグで淹れる時間がなくても、好きなときに美味しいお茶が飲める時代なのです。

◎朝の茶事

acureと伊藤園の共同開発によって生まれた「朝の茶事」は、忙しいビジネスパーソンにも瞬間的にホッとできる時間を与えてくれるペットボトルの緑茶です。朝の乾いた体に染み渡るお茶の風味は、新しい一日を元気に始めるための「朝の茶事」に最適です。

「朝の茶事 すっきり抹茶入り」は、緑茶の爽やかな風味に加えて抹茶特有のすっきりとした渋みのバランスが特徴。525mlの大容量で、暑い日にゴクゴク飲むにも仕事中に少しずつ飲むにも最適です。

玉露をブレンドすることで高級茶特有の旨みと甘みが加わった「朝の茶事 味わい玉露入り」は、275mlの手頃なサイズ。お茶らしい爽やかな風味でありながら、高級な和菓子にもピッタリ合う奥深い味わいが楽しめます。

あなた自身の「朝の茶事」にふさわしい一本をお選びください! 




ライタープロフィール
安間孝介(あんまこうすけ) 日本茶インストラクター

1979年生まれ、静岡県袋井市出身。安間製茶代表。
高校教師・Webライターを経て袋井市のお茶農家「安間製茶」に婿入りし、お茶の栽培・製造・販売を手掛ける。
その傍らで日本茶インストラクターの資格を取得し、日本茶の講座や記事の執筆などを行う。