なぜ、人は激辛に魅かれるの?
今や第四次ブームと呼ばれている程、注目度の高い激辛料理。
絵力やシズル感があり、多くのメディアで紹介されやすいコンテンツの一つでもあります。
激辛好きでしたら、見るだけで食べたくなりますよね。
実際にそれを食べてみたら、どう感じるでしょうか?
人間は、食べ物を口の中に入れた時、舌の表面にある味細胞の集まった器官「味蕾」から、神経細胞を介して脳に伝達され、味を感じ取ります。その感覚を「味覚」と言い、5つの基本味(酸味、甘味、塩味、苦味、旨味)で構成されています。そこには、辛味は入っていません。辛い物を食べると、43℃以上の熱に反応する舌の神経感覚の温度受容体TRPV1を刺激し、熱を感じたと勘違いして汗をかいたり、痛みを感じます。
2021年度のノーベル生理学・医学賞を受賞したDavid Julius氏は、その辛さと熱さに反応するセンサーを発見し、辛味は、味覚ではなく痛覚であることが明らかになりました。
激辛料理を食べて痛みを感じると、脳は興奮・覚醒などの効果があるアドレナリンと、痛みを抑える為に、β-エンドルフィンという物質が出ます。エンドルフィンは、鎮静作用のほかに、快感や幸福感をもたらす作用もあります。そして辛さに慣れてくると、また無性に食べたくなります。エンドルフィンの分泌を増やしたいから、さらなる体験を求め、辛さがエスカレートします。またアドレナリン分泌によって、脂肪代謝などエネルギー代謝の促進や発汗を促す効果を期待して摂取する方もいます。
その刺激的な快感を求めたり、汗をかいてスカッとし、気分を紛らわせ、ストレスを解消すべく心理的に欲する方もいます。
ところで、激辛の定義はあると思いますか?
結論から言うと、辛さの耐性は人それぞれ違い、判断するのが難しいです。
そもそも激辛ブームの火付け役の一つは、神田のせんべい店『神田淡平』が一味唐辛子を満遍なくまぶした激辛せんべいを発売し、「激辛」の2文字が『現代用語の基礎知識、新語部門』の銀賞を受賞したことからです。
それ以降、そんなに辛くはない品種の唐辛子をたくさん加えて商品化するお店もあれば、
ギネス世界記録で過去に世界一辛い唐辛子に認定されたことがある唐辛子(ハバネロ、ブート・ジョロキア、トリニダード・スコーピオン、キャロライナ・リーパー等)を入れた商品を販売するお店も増えてきました。それは、わかりやすく激辛ですよね。(笑)
1912年頃に、アメリカの薬理学者Wilbur Scoville氏が考案したスコヴィル値のおかげで、辛味成分のカプサイシンの量を測定し、どのくらい辛いのか数値化できるようになりました。唐辛子を使った激辛らしき商品にどの名称の唐辛子を使っているかがわかれば、一つの目安になります。
しかし、個体差はありますし、調理法や提供方法によって辛さの感じ方は変わってくるので、判断材料の一つだと思う方が良いです。
辛党はグローバル?世界の激辛料理を紹介
近隣のアジア圏で、古くから伝えられてきている辛い料理をいくつか紹介します。
中国・四川の辛い料理といえば主に、花椒の痺れる“麻”や唐辛子の辛さ“辣”を効かせて、辛くしています。代表的なメニューの一つは、麻婆豆腐です。豆板醤、花椒、そして唐辛子は、例えば華やかな香りの朝天椒、香りが強い子弾頭や辛さが強めな満天星辣椒等を使い分けたりします。
火鍋は、重慶市が発祥とされており、四川省に広まりました。
韓国料理の辛い料理は、韓国の赤や青唐辛子、甘辛調味料コチュジャンや辛味噌で辛さを調整しています。
特に、プルダック、タッカルビ、ヤンニョムチキンといった鶏肉料理や手長蛸を甘辛く炒めたナッチポックンは、今では日本でも有名ですよね。
タイ料理の辛い料理は主に、小ぶりな見た目とは裏腹で辛いプリックキーヌーという唐辛子が使われています。中でもエビの辛酸っぱい「トムヤムクン」は、世界三大スープの一つとして名高いです。
日本の激辛に欠かせない唐辛子が日本に持ち込まれた経緯は、諸説あります。その一つは、16世紀にポルトガル人によって持ち込まれた説です。その頃は、食用としてではなく漢方薬として用いられていたといわれています。それ以降七味唐辛子など調味料として誕生しましたが、唐辛子を日常的に使う程代表的な料理がない日本は、度々激辛ブームが起こります。景気、気温の変化、生活スタイルが一変したストレス、それに伴う、商品の登場等が要因にあげられます。
おすすめ激辛料理3選!
①グリーンカレー(辛さレベル★)
②餃子のタレ(辛さレベル★★)
③ユッケジャンスープ(辛さレベル★★★)
まずは、辛さレベル1タイ料理のグリーンカレー(ゲーンキャオワーン)です。
一見そんなに辛くなさそうですよね!?タイの青唐辛子やハーブで緑がかった色をしており、それらの食材のおかげで爽やかな香りと辛さを楽しめます。
クミンシードやコリアンダーシードなどの風味豊かなスパイスの他に、ココナッツミルクも入っているから甘くてコクのあるマイルドな味わいです。まずは入門的な辛さをご紹介したのですが、熱狂的な激辛党でしたら、青唐辛子を多めに入れて辛さを調節しましょう。
続いて、辛さレベル2餃子のタレです。
餃子のタレといえば、醤油×酢×辣油派か酢×胡椒派もしくはポン酢派等人それぞれ好みはありますよね。激辛好きの方には、激辛辣油につけて食べることをオススメします。
特に私が最近はまっているのは、表参道にある激辛グルメ好きの聖地と呼ばれている唐辛子専門店『赤い壺』のお取り寄せで買える「激辛ラー油」です。香りが高いものや余韻が長いもの等お店が厳選した5種の唐辛子をブレンドして使用しています。それが、餃子の旨味と相まって、やみつきになります。
3つ目は、辛さレベル3ユッケジャンスープです。
韓国料理のユッケジャンスープは、牛肉入りの辛いスープです。韓国の粉唐辛子コチュカルや甘辛調味料コチュジャンなどで辛さを調整します。さらに今回は仕上げに、韓国の激辛調味料「カプサイシンソース」を加え、激辛上級者向けにアレンジしています。
本来冷たい料理よりも熱い料理の方が辛さを感じるので、スープが熱々だから一層舌がヒリヒリします。
辛い料理と一緒に飲みたいドリンク
辛み成分のカプサイシンは脂溶性なので、唐辛子系の激辛料理を食べた時は、牛乳やヨーグルト飲料などの乳製品を飲むと辛さが和らぎます。私自身、ギネスクラスの激辛唐辛子を使った
料理を食べる前後には必ず乳製品を摂取し、胃腸を保護しています。
激辛料理がいっそう楽しめるようなドリンクをピックアップし、それぞれのペアリングを考案しました。
①グリーンカレー×ラッシー風ドリンク(愛媛みかん×オーガニックソイミルク)
グリーンカレーは、青唐辛子の若々しい辛さとタイのハーブ類の鼻に抜ける爽やかな香り、そしてココナッツミルクの甘くてマイルドな味を楽しめます。
それ合わせたのは、「ビタシ オーガニックソイミルク」×「愛媛みかん」のラッシー風ドリンクです。
「ビタシ オーガニックソイミルク」は、有機大豆を使用した植物性ミルクです。大豆特有のクセがなく砂糖不使用で、グリーンカレーの隠し味に加えたい程まろやかで、相性抜群です。さらに、グリーンカレーに加えたハーブ類の一つコブミカンの葉も入っており、この柑橘に親和性のあるみかんジュース「愛媛みかん」をソイミルクにブレンドしました。愛媛産うんしゅうみかんを100%使用し、はつらつとした甘味と酸味があるみかんジュースは、ラッシー風にすることで優しい甘さになり、優しい辛さのカレーに合い、癒されます!
ドリンクのおすすめの割合は、「愛媛みかん」1に対して、「オーガニックソイミルク」を2倍入れて混ぜ、お好みで蜂蜜を加えると、さらに飲みやすくなります。※1歳未満の乳児には与えないでください。
②
餃子×有機マテ茶
餃子を激辛辣油につけて食べる場合、「チャリティ 有機マテ茶」がオススメです。
この有機マテ茶は、ノンアルコールドリンクなのに、ウイスキーを炭酸水で割るハイボールの口当たりと似ています。ハイボールに合う手軽なおつまみの一つ餃子を休肝日に食べるなら、うってつけなのが、この有機マテ茶。旨味が詰まった餃子に唐辛子をふんだんに使った中華テイストの激辛辣油をつけて食べ、微炭酸で渋みが少ないマテ茶を嗜むと、スッキリとした余韻になります。
有機マテ茶は、リサイクル&アップサイクルできる見た目も映えるガラスボトルを使用し、原料は全てオーガニック・フェアトレードの農場で作られたものを使用したサステナブルドリンクです。スタイリッシュな食生活で、気分が上がりそうですね!
③ユッケジャンスープ×GINGERSHOOT
牛肉の旨味を引き出したユッケジャンスープの仕上げに、韓国の激辛調味料「カプサイシンソース」を加えた激辛ユッケジャンスープには、「GINGERSHOOT」が一押しです。
「GINGERSHOOT」は、埼玉県さいたま市の「見沼田んぼ」で衰退してしまった生姜栽培を復活させ、休耕地を減らすというプロジェクトの一環で開発された発酵ジンジャーエールです。
生姜の「ショウガオール」という辛味成分と炭酸のWの刺激にはまるノンアルコール発酵炭酸飲料で、ドリンク自体が辛いので、ユッケジャンスープと相乗して辛く、激辛上級者向けです。
このように激辛料理は、食べ方によっては、幸福感や満足感が得られ、癖になる魅力的な食べ物なのです。
先に述べたように、辛さの耐性は人それぞれです。唐辛子等の辛い香辛料を使った料理や調味料による適度な辛さは、食欲を増進させ、食事をする助けになります。しかし、過度に摂取しすぎると、喉が荒れたり、胃痙攣になる可能性があります。よって、無理は禁物です。
ご自身の体調にあわせて、段階的にゲキカライフを楽しみましょう。
ライタープロフィール
金 成姫(きむ そんひ)激辛料理専門家
調理師免許や1級フードアナリスト等の資格を取得後、
さまざまな商品開発に関わる。
特に得意ジャンルとする旨辛や激辛グルメについてテレビやラジオなどでコメントをするほか、
イベントプロデュースやメニュー監修なども手掛けている。
※活動例
辛サガアツイ食堂のメニュー監修
テレビドラマ『ゲキカラドウ』の激辛監修
【食関係の保有資格】
調理師
利き酒師
香辛料ソムリエ
薬膳アドバイザー
ワインエキスパート
1級フードアナリスト
チーズプロフェッショナル 等