プレゼントにも!今読みたい大人向けのおすすめ人気絵本5選







日本の秋は実りの季節。その一方で、今年もあと3か月。
もしかすると、そろそろ疲れが出てきている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
そんな時は、心にそっと優しく寄り添ってくれる「絵本」はいかがですか?



今増えている大人も楽しめる絵本


えっ?おとなに絵本?

そうなんです。
いま、絵本はおとなにも注目されているんですよ。
それも敢えて「おとな向け」として出版されている絵本ではありません。
子どもに読んであげているうちに自分の方が泣いてしまった。という経験をお持ちの方もたくさんいらっしゃいます。

なぜだと思いますか?

子どもは《物語の主人公になれる》特技がある一方で、人生の経験値が高いおとなは絵本の中の出来事を自分の体験と照らし合わせて感じていくからです。

おじいちゃんと孫がゆったり散歩しているだけの話に泣いてしまったのは、亡くなった祖父がいつも優しかった過去を思い出したから。

森のどうぶつたちが助け合う話しで感動したのは、職場でのじぶんの立場と同じだったから。

絵本を読む時間はほんの少し。
なのにハッとさせられ、気づく事がいっぱいあります。
世界中を旅することだってできるのです。

今回はたくさんの中から“絵”も“色”も美しく、眺めているだけでも癒される絵本を選んでみました。
飾るだけで素敵なインテリアの役目もしてくれますので、プレゼントにもおすすめです。
そして中を開けば、絵本に添えられた短いことばがこころにグッと響きます。

さぁ。気持ちを解放して、絵本と共にこころのページをめくってみましょう。



「森のいのち」




 
ここは北海道の森の中。
誰もいないはずなのに、なにか聞こえる。
それは、いのちのいきづかい。
川が流れ、木々がさざめき、風が吹く。
ゆっくりといろんなものが生きている。
しかし深い森をよく見ると、存在しているのは生きているものだけではない。
自然の中で役目を終えたものたちが、ほかの命に繋がっていた。


北海道に住む写真家の小寺卓矢さんによる写真絵本は大自然の中で繰り返される【生命のたくましさ】を見事に切り取っています。
倒木は「死」をもって、いのちを生み出す。それは「再生」も意味するのです。
そこには、自然の恵みへの感謝と感動も感じられます。
ぜひ声に出して読みながら、絵本でマイナスイオンを浴びてください。

大自然を満喫したいけど、時間がない。という方は、冷えた天然水を飲みながらこの絵本を開いてみませんか?
奥深い森の中を散策している途中で、何年もかけて湧き出してきた天然水を発見した気持ちにさせてくれます。
ミネラルたっぷりの澄んだ水と絵本で、読後の心はろ過された天然水のように浄化されているでしょう。
手軽に大自然の恩恵をうけられ、心にも生活にもうるおいも与えてくれますよ。






「もみじのてがみ」
 



「てがみだよ てがみだよ」つぐみが1枚の紅葉を運んできます。それを見た動物たちは「あ!もみじのてがみ。ゆき ふるの?」と尋ね、みんなで紅葉を探しにでかけます。
自然界のいきもの達にとって、雪に備える事はいのちを守ること。もみじと言う自然の便りが届いて、ゆきの到来が近いことを感じるのです。
そして、ようやく見つけた山々のもみじ。さまざまな表情の“赤”で木々の美しさを捉え、秋をたっぷりと感じられる一冊です。


「もみじのてがみ」は一般的な絵本よりも大きめですが、絵本作家きくちちきさんは更に大きな和紙に墨で描かれています。
そのダイナミックな手法によりひとつひとつの線が生き生きとして迫力もあり、いきものや自然すべてに躍動感が溢れ、ページごとに文字以上の物語が伝わってきます。
目の前にもみじが現れるシーンでは、きっと誰もが息をのむことでしょう。
圧巻の絵で描かれたこちらの絵本は、世界最大規模の絵本原画展で「金牌」を受賞し、まさに芸術作品とも言えます。


芸術の秋には絵本です。では、食欲の秋には何がいいでしょう?
野生動物のように、冬に備えることを大切にするなら「りんご」がおすすめです。
ことわざ「りんごが赤くなると医者があおくなる」も、秋に真っ赤に実るりんごを食べると病気知らずで医者にかからなくて済むという意味で、「備える」ことのひとつですから。
真っ赤なもみじを楽しみながら冬支度。真っ赤なりんごで元気をチャージ。
間もなくやってくる冬をゆったり迎えられるといいですね。





「ルリユールおじさん」


 

パリの街にすむ女の子ソフィー。
大切にしている植物図鑑がこわれてしまい、裏路地にひっそりと佇むルリユールのお店を訪ねます。
「ルリユール」とは手作業で本を製本するお仕事。いわゆる職人です。
ぼくとつと仕事を続けるルリユールおじさん。
作業中も無邪気に話しかけてくるソフィーの相手をしているうちに、少年時代に父親のそばで作業を眺めていたことを思い出します。
一人前のルリユールになるために父に言われたひと言は「名を残さなくてもいい。ぼうず、いい手を持て」でした。
修復され蘇る宝物の本。
ソフィーという女の子の目を通して知る事ができるルリユールの直向きな仕事に、情熱と信念を感じる一冊です。


ルリユールは、印刷技術が発明されたヨーロッパで発展した実用的な職業で、日本にこの文化はありません。
しかし、製本の60工程すべてを手仕事で出来る製本職人はパリでも現在はひとけたになりました。
それでもこの技術を求める人がいて、こだわり続ける職人がいるから続いているのです。
頑固な職人の優しさと純粋な少女との交流に心が温まります。


日本にも伝統的な職人文化があります。その一つが蕎麦職人。
なぜこんなに蕎麦が長く愛され続けているのでしょうか?
蕎麦にも産地があって、それぞれにこだわりを持って作りつづけられています。
愛情込めて蕎麦の実を作る人。信念を持って蕎麦を打つ人。
香り豊かでまろやかなのど越しの蕎麦が生まれるには、こだわり続けた職人たちの想いが込められているからです。
実直な仕事と信念はどんな時も私たちを感動させてくれます。






「モカと幸せのコーヒー」
 




柔らかで可愛らしい表紙から一転。光を感じない真っ暗な仕事場のデスクの上から物語がはじまります。
日常に疲れ、傷ついた青年のまえに白くて小さなうさぎが現れます。名前はモカ。
モカは青年のために「幸せのコーヒー」をつくりますが、小さなモカの優しい言葉が鬱陶しく思うくらいイラついている青年。
「泣いてもいいんだよ」のことばで体中の力がすべて抜け、それをきっかけに青年は希望に満ち溢れていた昔のじぶんを思い出し、涙が溢れます。
微笑むことも、泣くことも忘れていた多忙な日々の中で、一杯のコーヒーが気力を失っていたこころを温かくほぐしてくれます。


人間関係や業務が多様化している社会の中で、戦いながら生活をしている方も多いのではないでしょうか。
忙しい日々の中で、心も身体も疲れきっていることはありませんか?
パステルの淡く優しい色で描かれたこの絵本を見ていると、まるでセラピーを受けているかのように気持ちが和んでいきます。
頑張っているあの人へのプレゼントにも最適です。


すべてを投げ出したくなった時や元気を出したい時はこの絵本を開いてみて下さい。
その後の一杯のコーヒーは、疲れた身体を解きほぐしてくれるでしょう。
特にカフェインレスコーヒーは、タイミングを選ばずにいつでも癒してくれます。





「おちゃのじかんにきたとら」
 




母と娘がおちゃを飲もうと準備をしていたら、来客が。それは大きなトラ。
お腹を空かせたトラにふたりはサンドイッチもおちゃもビスケットも食べさせてあげますが、トラは満足しません。
冷蔵庫や棚の中のものだけでなく、水道の水も飲みほしてしまします。
おなかいっぱいのトラが帰った後は、さぁ大変。自分たちの食べるものがなにひとつ無くなってしまったのです。
そこに帰ってきたお父さん。みんなでおしゃれをして、ステキなレストランへ出かけます。

突然やってきたトラがすべてを食べつくしてしまうのに、最後まで優しい親子。
それを知らされたお父さんも、なんとおおらかなこと!結局ラストは楽しい時間に満足するのですから、心の広さは宇宙規模。
タイトルの「おちゃのじかん」は、気持ちにゆとりがあるからこその時間だと気付かされました。
そして、《もてなす》ってお互いに嬉しいものですね。

ゆったりとした気持ちになりたい時は玉露が入ったお茶がおすすめです。
驚くような出来事があっても、まずは茶葉と水にこだわった一杯のお茶で心を落ち着かせましょう。
大切な方へのおもてなしにも最適です。温めて飲むと、身体も心も温まりますよ。




いかがでしたか?
ぜひ書店で気になる表紙の絵本を開いてみて下さい。
その一冊が、心に響いてくることがあるはずです。
子どもと一緒に楽しむのも良いですし、心が疲れた日にそっと開いてみるのもおすすめです。
読書としても、鑑賞としても、絵本は素晴らしい役目をはたしてくれます。
身体に沁みるドリンクと一緒に、秋の夜長を楽しんでくださいね。



今回紹介した絵本

■「森のいのち」 文・写真 小寺卓矢 アリス館
■「もみじのてがみ」 きくちちき 小峰書店
■「ルリユールおじさん」 いせひでこ・作 講談社
■「モカと幸せのコーヒー」 刀根里衣 NHK出版
■「おちゃのじかんにきたとら」 作 ジュディス・カー  訳 晴海耕平  童話館出版




ライタープロフィール

岸 春江  フリーアナウンサー・絵本ナビゲーター 

札幌を起点にフリーアナウンサーとして、テレビ・CM・セレモニーなどジャンルを問わず活動。
出産を機に「絵本」の魅力にはまり【独立行政法人国立青少年教育振興機構 絵本専門士】を取得。
現在は絵本を推進する講演や、絵本作家とのコラボイベントの開催も多数。
立ち上げた絵本サークルは【北海道読書推進運動協議会】の『優良読書グループ 奨励賞』受賞。
ゲーム障害などから子どもを守るために「子どもとメディアインストラクター(北海道)」も取得。